ERP知識シリーズ マスメン 第四部:マスメンのシナリオ判断があります。そして、その判断には現在の情報が必要です。
今回は新製品Aを例に、業務上の出来事からマスメンのシナリオを組み立ててみます。
最初にトリガーイベントを置く
新製品Aの開発と試作が進み、初回量産を10月15日、発売を11月1日とすることが決まりました。品番や試作用のBOMはすでにあり、原材料や仕入先についても評価が進んでいます。ここから量産と販売に向けて、必要な情報を確定していきます。
シナリオを描くときは、まず業務を始めるトリガーイベントを置きます。今回であれば、「新製品Aの初回量産日と発売日が決定した」という出来事です。
ここから、量産と販売に必要な判断を順にたどります。
判断するために、何を見るのか
例えば、量産で使用する原材料を最終決定するとします。その判断には、候補材料の評価結果に加えて、現在の仕入先、購買価格、納品リードタイム、最小発注量などが必要になることがあります。既存製品と共通の原材料を使う場合には、現在の在庫や将来の所要量も判断材料になります。
原価を検討する場面では、BOMや購買価格、生産条件などを確認します。販売価格を決める場面では、原価や既存商品の価格体系などを参照するでしょう。
ここでERPや周辺システムを使う目的は、登録作業ではありません。業務上の判断に必要な事実を確認することです。CRUDで見れば、ここではReadが重要な役割を持ちます。
シナリオには、「何を決めるのか」と合わせて、「その判断のために何を確認するのか」を描きます。これを入れることで、マスメンのシナリオに業務上の判断が見えるようになります。
決定した内容をERPへ反映する
必要な情報を確認すると、業務上の判断が進みます。例えば、量産で使用する原材料と仕入先を決め、購買条件を確定します。その内容を受けて量産用のBOMを確定し、原価を確認した上で販売価格を決めます。
こうして決定した内容をERPへ反映します。
新たに管理する品目があればCreateし、既存のBOMや購買条件を変更するのであればUpdateします。さらに、量産開始日や価格適用日など、いつからその情報を使うのかも設定します。
ここでマスメンのシナリオには、二つの情報の流れがあることが分かります。
一つは、判断するために現在の情報を確認する流れです。もう一つは、決定した内容をERPへ反映する流れです。
この二つをつなげることで、どの情報を確認し、どのような判断を経て、そのマスターが登録・変更されたのかを追えるようになります。
ReadからCreate・Updateまでを一つの流れで描く
仕入先の決定を例にすると、さらに分かりやすくなります。候補となる仕入先について、価格やリードタイム、発注条件などを確認します。その情報を基に採用する仕入先を決定し、決定した結果をERPへ反映します。
BOMも同じです。現在の構成や使用している原材料を確認し、量産で採用する構成を決定した上で、その結果をBOMへ反映します。
このようにシナリオを描くと、Read → 判断 → 決定 → Create/Updateという流れが見えてきます。
マスターへの登録や変更だけを取り出すよりも、実際の業務に近い形でマスメンを確認できます。
どこからシナリオを始めるか
マスメンに至るすべての判断を、一つのシナリオに含める必要はありません。原材料の品質評価や仕入先選定を別の業務プロセスとして確認するのであれば、「量産で使用する原材料Bと仕入先Cの採用が決定した」ところからマスメンのシナリオを始めることもできます。
一方、ERPに登録されている情報を使って仕入先を比較し、その判断までCRPで確認したいのであれば、候補仕入先の確認からシナリオに含めます。シナリオの範囲は、今回何を確認したいのかによって決めます。
判断に必要な情報を正しく取得できることを確認するのか。決定した内容を正しくマスターへ反映できることを確認するのか。両方を一連の業務として確認するのか。この範囲を最初に決めることで、シナリオの開始点も明確になります。
最後は後続業務で確かめる
決定した内容をERPへ反映したら、その情報を使って次の業務へ進めることを確認します。採用した仕入先へ発注できる。確定したBOMを使って生産計画や所要量計算ができる。決定した販売価格で受注できる。ここまで確認すると、判断に使った情報から、決定、マスターへの反映、後続業務までが一本につながります。
新製品Aのシナリオをまとめると、量産日と発売日の決定をトリガーとして、必要な情報を確認し、その情報を使って判断します。決定した内容をマスターへ反映し、最後に量産や販売の業務で正しく使えることを確認します。これが、マスメンのシナリオを描く基本的な流れです。
マスメンのシナリオには「判断」を描く
マスメンのシナリオで重要なのは、登録する項目を並べることよりも、その登録内容がどのような判断によって決まったのかを追えることです。そのためには、判断の前に何を確認したのかも必要になります。
トリガーイベント → 情報確認 → 判断・決定 → マスターへの反映 → 後続業務
この流れで描くことで、マスターメンテナンスを実際の業務として確認できます。そして、「判断のためにどの情報を見るのか」を考えると、次の問いにつながります。
その情報は、どのシステムを正として確認するのでしょうか。ERPなのか、PLMなのか、CRMなのか。このSoTの考え方については、後の回で詳しく扱います。
次回は、今回の描き方を、すでに稼働している製品の変更へ適用します。第五部では、原材料や設計の変更を例に、現在使っているマスターや在庫、発注、生産計画との関係をどのようにシナリオへ組み込むのかを考えていきます。