品番を取る、取らない? ERPにおける仮品番と本品番の境界線 《中編》製造する試作品は、どこから生産管理するのか
前編では、仕入先から購入するサンプル品を、どの時点からERPの品目として管理するのかを考えました。
今回取り上げるのは、自社または外注先で製造する試作品です。ここでは、さらに二つの問いが生まれます。
「試作品をつくるとき、製造指図を作成しますか?」
「量産用の原材料を試作に使う時、その計画や使用量と原価をどうしますか?」
製品開発では、研究室で少量を混ぜ合わせる試作もあれば、量産設備を使って製造条件を確認する試作もあります。外注先へ材料を渡し、試作品の製造を依頼することもあります。
同じ試作という言葉を使っても、ERPで管理する範囲は大きく異なります。
開発部門内で完結する試作
開発部門が評価用に購入した材料を使い、研究室内で少量の試作品をつくるとします。
この段階では、試作品を何個作ったかよりも、どの配合で、どの条件で製造し、どのような評価結果が得られたかが重要です。そのため、配合、製造条件、評価結果、設計変更はPLMや開発管理システムで管理します。試作に要した費用も開発案件へ集計します。
過去のブログ「SaaS ERPの導入をFit to Standard に導くビジネスデータモデル構築とは【後編】~PLMとの連携やE-BOM・M-BOMの橋渡し~」では、E-BOMとM-BOMの役割、PLMとERPのコード連携、試作段階の購買や見積原価を取り上げました。本稿では、その設計情報を実際の製造へ切り替える境界線を考えます。
試作で量産用原材料を使う
次の試作では、工場に保管している量産用原材料を使うことになりました。量産用原材料を使用するなら、まず「何を、どれだけ使用する予定なのか」という計画が必要になります。製造後は、「実際にどの材料をどれだけ使用したのか」「何個完成したのか」「どれだけ廃棄や損耗が発生したのか」という実績を記録します。さらに、それらの実績をもとに試作原価を集計します。つまり、試作であっても量産用原材料を使用する時点で、計画、実績、原価、というERPの生産管理が必要になります。
もし計画を立てず、実績も記録しなければ、量産用原材料の在庫は正しく管理できません。試作で使用した数量が量産実績へ混在し、歩留まりや生産性の分析、標準原価の検証にも影響します。
そこで、試作用の製造指図を作成します。試作指図には、使用予定の原材料、歩留を加味した予定数量、製造する試作品を設定します。製造後は、実際の材料使用量、ロット、完成数量、損耗、作業時間を記録し、試作原価を開発案件へ集計します。
ERP標準の製造指図、材料払出、実績報告を利用すれば、量産と同じ仕組みで試作を管理できます。オーダータイプやステータスによって試作と量産を区別すれば、新しい業務やシステムを増やす必要もありません。
量産用原材料を正式に払い出す時点が、開発部門の試作からERPの生産管理へ移る一つ目の境界線です。
試作品を品目として管理するか
試作用の製造指図を作成する場合でも、試作品そのものを品目として登録するかどうかは別の判断になります。
製造後すぐに評価し、廃棄する試作品であれば、試作指図や開発案件で識別できます。一方、試作品を保管し、複数回の評価や顧客提出、別の試作で継続して使用するなら、ERPの品目として登録します。品目定義が確定しているなら、同じ品番を使用し、品目ステータスで「評価中」と「量産使用可」を管理します。
評価を通じて品目定義を固める段階では仮品番を設定し、定義が確定した時点で本品番へ移行します。前編で説明した品番の考え方は、製造する試作品でも変わりません。
外注先で製造する試作品
外注先で試作品を製造するときは、材料を誰が調達するのかを最初に確認します。
外注先が材料を調達し、完成した試作品を納品するなら、完成品の購買として管理します。一方、自社が量産用原材料を支給するなら、外注加工として管理します。
ERPでは、支給した材料、使用数量、残数量、返却数量、完成数量、外注加工費を一つの製造プロセスとして管理できます。
材料の保管場所が外注先へ変わっても、自社が所有する在庫であることは変わりません。そのため、外注先にある材料もERPで継続して管理します。
生産管理へ切り替える境界線
製造する試作品には、二つの境界線があります。
一つ目は、生産管理へ切り替える境界線です。量産用原材料の使用計画を立て、材料使用量、完成数量、ロット、損耗、作業時間、原価を管理する時点で、試作用の製造指図を作成します。この時点で、製造する試作品にも品番を設定します。
二つ目は、仮品番から本品番へ移行する境界線です。試作品の定義が確定しているなら同じ品番を継続し、評価を通じて品目定義を固める場合は仮品番を使用し、定義が確定した時点で本品番へ移行します。
次回の後編では、工具、消耗品、設備予備品などの一般購買品を取り上げます。品番を取る物と、購買カテゴリーや費用として管理する物の境界線を考えます。