品番を取る、取らない? ERPにおける仮品番と本品番の境界線 《前編》購入するサンプル品は、いつ品番を取り、どう量産へ移行するのか

ERP導入で品目マスターの議論をしていると、毎回のように出てくる質問があります。「サンプル品にも品番を取りますか?」

製品や量産用の原材料であれば、品番を付けて、発注、在庫、品質、原価を管理するイメージをもてます。一方で、製品企画や研究開発で取り寄せるサンプル品は、購入時点で採用の可否や使用方法が確定していません。

評価で使い切るものもあれば、別の試作で再び使用するものもあります。複数の候補品と比較した後、量産用の原材料や部品として採用されるものもあります。

この違いを踏まえ、購入するサンプル品をどの時点からERPの品目として扱うのかを考えます。

本稿で取り上げるのは、仕入先から購入する原材料、部品、容器、包装資材などのサンプル品です。自社や外注先で製造する試作品は、次の中編で取り上げます。

一度限りの評価は購買記録で管理する

新しい原材料を評価するため、仕入先から少量を取り寄せるとします。開発部門が購入依頼を作成し、購買部門が仕入先へ発注します。発注明細には、品名、メーカー、型式、規格、用途、開発案件を記録します。サンプル品を受け取り、一度の評価で使い切れば、発注、入荷、検収、支払の記録によって購買業務は完了します。

この段階で管理するのは、何を、どこから、いくらで購入し、何に使用したかという取引の記録です。同じサンプル品を再購入するときは、過去の発注明細から品名、仕入先、規格を確認します。

開発部門内で保管し、評価結果を記録する段階では、サンプル管理台帳やPLMの管理番号を使用します。購買記録と開発部門内の管理によって、必要な情報を把握できます。

ERPで一つの品目として管理する段階

評価が進み、同じサンプル品を複数の開発案件で使用するようになると、管理の範囲が広がります。

購買部門は、過去の購入価格や仕入先を確認します。開発部門は、どの試作で使用し、どのような評価になったのかを記録します。品質部門は、メーカー、規格、仕入先ロットと評価結果を関連付けます。在庫を管理する部門は、保管場所、残数量、有効期限を把握します。

購買、在庫、品質、開発の各業務が同じサンプル品を扱うようになると、名称だけで物を特定することが難しくなります。メーカー名や型式には表記の違いが生じます。同じ名称でも、規格、成分、材質、寸法が異なれば、評価対象も変わります。そこで、ERPの品目マスターへ登録し、品番によって一つの物を識別します。

次のような管理をERPで行う段階が、品目マスターへ登録する境界線です。

  • 発注履歴を品目単位で管理する
  • 在庫数量、保管場所、有効期限を管理する
  • 仕入先ロットと品質評価を関連付ける
  • 開発案件や試作ごとの使用実績を記録する
  • 使用量や購入費用を開発案件へ集計する
  • 量産採用に向けて品目情報を整備する

購入回数、購入金額、残数量も判断材料になります。最終的には、そのサンプル品をERP上で一つの品目として継続管理するかによって決まります。

品番を変えるか、ステータスを変えるか

サンプル品を品目マスターへ登録するとき、次に決めるのが品番の扱いです。

サンプル段階と量産段階で同じ物を購入するのであれば、同じ品番を継続して使用できます。

登録時の品目ステータスを「評価中」とし、開発用途だけで発注できるようにします。量産採用が承認された後、「量産使用可」へ変更し、通常の購買や生産で使用できる状態にします。

同じ品番を継続して使えば、サンプル段階の購入履歴、仕入先ロット、評価結果、残在庫をそのまま引き継げます。一物一品番の考え方にも沿っています。

一方、サンプル段階では規格や品目の定義が確定しておらず、量産採用時に材質、成分、寸法、仕入先などを確定することもあります。

このときは、評価中の物に仮品番を設定し、量産採用時に本品番を新たに設定します。

仮品番の目的は、評価中の品目を量産品と区別し、使用できる業務や部門を制御することです。

例えば、仮品番には次のような制限を設定します。

  • 開発用途の発注だけを許可する
  • 使用できる部門を限定する
  • 量産用の部品表や配合表への登録を制限する
  • 品目ステータスを評価中として管理する
  • 採用または不採用の結果を記録する

品番を変えるかどうかは、サンプル段階と量産段階で物の定義が同じかによって決めます。

量産採用後の管理へ移行する

評価が完了し、量産採用が承認されると、継続的な購買と生産に必要な情報を整えます。

購買では、仕入先、発注単位、リードタイム、最小発注数量を設定します。品質では、規格、検査方法、保管条件を定めます。生産では、部品表や配合表へ登録します。原価計算に必要な情報も設定します。

サンプル段階から同じ品番を使用している場合は、品目ステータスを量産使用可へ変更します。

仮品番を使用している場合は、本品番を登録し、購入履歴、評価結果、規格書、残在庫を本品番へ移行します。仮品番による新規発注も終了します。

量産採用の承認、品目情報の整備、ステータスの変更、仮品番から本品番への移行までを一つの業務プロセスとして設計します。

二つの境界線を分けて考える

購入するサンプル品には、二つの境界線があります。

一つ目は、ERPの品目マスターへ登録する境界線です。購買記録や開発部門内の管理から、購買、在庫、品質、開発の各業務で一つの物を継続管理する段階へ進んだとき、品番を設定します。

二つ目は、同じ品番を継続するか、仮品番から本品番へ切り替えるかという境界線です。サンプル段階と量産段階で品目の定義が同じなら、同じ品番を使い、品目ステータスを変更します。品目の定義が量産採用時に変わるなら、仮品番から本品番へ移行します。

サンプル品の管理では、品番を取るかどうかと、品番を変えるかどうかを分けて考えます。

次回の中編では、量産用原材料を使って、自社や外注先で製造するサンプル品を取り上げます。製造指図、材料払出、外注加工、試作原価へ管理範囲がどのように広がるのかを考えます。