ERP知識シリーズ リードタイム 第二部:リードタイムの種類
前回は、ERPに設定されているリードタイムが、実際の業務に合っているのかを考えました。
今回は、製造業で使われるリードタイムの種類を整理してみたいと思います。
製造業には、購買、生産、物流、販売など、それぞれの業務にリードタイムが存在します。そして、これらの時間は互いにつながり、製品を顧客へ届けるまでの時間を構成しています。
まずは、原材料の調達から製品の納品までの流れに沿って、それぞれのリードタイムを見ていきましょう。
購買に関するリードタイム
購買に関する代表的なものとして、購買処理リードタイム、仕入先納品リードタイム、受入検査リードタイムがあります。
購買処理リードタイムは、購買依頼を受けてから仕入先へ発注するまでの時間です。購買依頼の内容確認、発注数量や納期の調整、承認などが含まれます。
この時間に関連するものとして、以前のブログで取り上げた「ペーパーリードタイム」があります。ERPが提示した発注提案を人が確認し、必要に応じて調整してから発注するまでの時間を、計画上どのように考慮するかというものです。
仕入先納品リードタイムは、仕入先へ発注してから原材料が納品されるまでの時間です。仕入先での製造や出荷準備、輸送などが含まれ、契約条件として設定されることもあります。
受入検査リードタイムは、原材料が納品されてから検査を終え、使用可能になるまでの時間です。例えば、成分分析に2日必要な原材料であれば、その時間も生産計画に考慮する必要があります。
購買処理に2日、仕入先納品に10日、受入検査に2日かかる場合、購買依頼から原材料を使用できるまでには14日必要になります。
生産に関するリードタイム
生産に関する代表的なものが、製造リードタイムです。
製造を開始してから製品が完成するまでの時間を表し、加工、組立、段取り、工程間の運搬や待ち時間、検査などによって構成されます。
例えば、加工に4時間、組立に3時間、検査に1時間かかる製品があるとします。実際の作業時間は合計8時間ですが、工程間の待ち時間や設備の段取りによって、製造開始から完成まで3日かかることもあります。
また、製品の特性によって必要となる時間もあります。
食品の熟成、化学品の反応や養生、塗装後の乾燥、原材料の解凍などです。これらは時間の経過そのものが製品の状態や品質に影響する工程であり、工場の休業日にも進行する場合があります。
製造リードタイムを考える際には、各工程の作業時間に加え、工程間の待ち時間や製品の特性によって必要な時間も把握することが重要です。
物流・販売に関するリードタイム
製品が完成すると、顧客への納品に向けた物流業務が始まります。
出荷準備リードタイムは、出荷指示から運送会社への引渡しまでの時間です。ピッキング、梱包、出荷検品、積込みなどが含まれます。
輸送リードタイムは、出荷した製品が納品先へ到着するまでの時間です。配送先までの距離、輸送手段、配送便のスケジュールなどによって変わります。
物流センターを経由して顧客へ納品する場合には、工場から物流センターへの輸送、センターでの入荷・保管・出荷処理、顧客への配送といった時間も考慮する必要があります。
物流センターに完成品在庫を持つ場合、顧客からの注文に対してセンターの在庫から出荷できます。一方、工場から届いた製品を仕分けして出荷する通過型の物流センターでは、入荷から出荷までの処理時間が納品リードタイムに影響します。
海外から原材料を調達する場合には、海上輸送、通関、国内輸送などを含む輸入リードタイムもあります。
販売では、顧客から注文を受けてから納品するまでの受注納品リードタイムを考えます。これは受注処理、在庫引当、必要に応じた製造、出荷、配送など、受注後に実施する業務によって構成されます。
累積リードタイムとその用途
ここまで、業務ごとのリードタイムを見てきました。
では、一つの製品を供給するために、全体としてどれだけの時間が必要なのでしょうか。
ここで登場するのが、「累積リードタイム(Cumulative Lead Time)」です。
累積リードタイムは、製品を完成させるために必要な原材料の調達や製造について、各工程の前後関係を考慮して積み上げた時間です。
例えば、ある製品には原材料Aと原材料Bが必要で、それぞれの調達リードタイムが10日と15日、製造リードタイムが5日だとします。
両方の原材料を同時に発注し、揃ってから製造を開始する場合、累積リードタイムは20日です。
原材料Aの10日と原材料Bの15日を足し合わせるのではなく、製品完成までに必要な最も長い経路を考えます。
この累積リードタイムは、製品の供給に必要な期間の把握、調達や製造の開始時期の判断、顧客への納期回答などに活用できます。
また、どの原材料や工程が製品完成までの時間を左右しているのかを把握する上でも重要です。
ただし、実際の供給可能時期は、在庫の有無、設備能力、既存の生産計画などにも影響されます。累積リードタイムは、こうした判断を行うための基本的な時間情報となります。
顧客要求リードタイムとデカップリングポイント
ここで、もう一つ重要なリードタイムがあります。
顧客要求リードタイムです。
これは、顧客が注文してから納品までに許容する時間を表します。
例えば、原材料の調達に15日、製造に10日、出荷・配送に5日かかる製品を考えてみましょう。
原材料の調達から製品完成までの累積リードタイムは25日、顧客への納品まで含めると30日必要です。
一方、顧客要求リードタイムが7日だったら、どうでしょうか。
顧客が求める7日と、供給に必要な30日には23日の差があります。
この差に対応するためには、顧客から注文を受ける前に、調達や製造をどこまで進めておくかを考える必要があります。
例えば、原材料を在庫しておく方法があります。しかし、この場合は受注後に製造10日と配送5日が必要です。
製造途中の仕掛品を在庫しておけば、残りの製造工程と配送に必要な時間まで短縮できます。
完成品を在庫しておけば、受注後は出荷・配送の5日で納品できます。
このように、顧客の注文に備えて、どの段階まで生産や調達を進め、どこに在庫を持つのかという判断に関係するのが、デカップリングポイントです。
デカップリングポイントは、需要と供給を切り離す位置を意味します。製品や部品の共通性、製造工程、顧客要求リードタイムなどによって、その位置を検討します。
そして、その在庫ポイントでは、需要の増加や補充の遅れといった変動に備えるため、安全在庫を検討することになります。
安全在庫をどこに、どれだけ持つのかについては、別の機会に詳しく取り上げたいと思います。
ここで理解しておきたいのは、累積リードタイムと顧客要求リードタイムの関係が、受注前にどこまで準備するか、どこに在庫を持つかを考える重要な判断材料になるということです。
まとめ
製造業には、購買、生産、物流、販売など、業務ごとにさまざまなリードタイムが存在します。
これらを組み合わせた累積リードタイムによって、製品を供給するために必要な時間を把握できます。
さらに、顧客要求リードタイムと比較することで、受注前にどこまで調達や製造を進めるのか、どの段階に在庫を持つのかという判断につながります。
リードタイムは、調達や生産の開始時期を決めるための基準であると同時に、顧客要求に応えるための供給方式や在庫配置を考える上でも重要な情報です。
次回は、これらのリードタイムを実際にどのように測るのかを考えていきます。