ERP知識シリーズ リードタイム 第一部:そのリードタイム、正しく使えていますか?

「この原材料の納品リードタイムは何日ですか?」

「仕入先との契約では30日です。」

「実際の発注でも30日前に注文していますか?」

「いえ、生産部門からの依頼が遅れることが多いので、仕入先にお願いして20日くらいで納品してもらっています。」

この場合、何が問題なのでしょうか。

仕入先は30日という条件で取引を引き受けています。それにもかかわらず、実際の発注では毎回納期短縮を依頼しています。

仕入先は、生産順序を変更したり、在庫を余分に確保したり、特急輸送を利用したりして対応しているかもしれません。

一方、自社では納期に間に合っているため、こうした運用が当たり前になっていることも考えられます。

ここで考えたいのは、なぜ契約した30日を確保できないのかということです。

生産計画が原材料の調達リードタイムを十分に考慮していないのか。購買依頼から発注までに時間がかかっているのか。それとも、生産計画の変更が頻繁に発生しているのか。

リードタイムは、仕入先から自社の購買、生産、そして顧客へとつながっています。一つの部門で生じた時間の不足を、別の部門や取引先が吸収しているのかもしれません。

今回は、ERP導入の現場で見られるリードタイムに関するさまざまな問題を考えてみたいと思います。

その数値は、誰が決めたのか

ERPのマスターには、購買、生産、物流などに関するさまざまなリードタイムが設定されています。ところが、その数値の根拠を確認すると、明確な回答が得られないことがあります。

「前のシステムでも同じ数字でした。」

「以前の担当者が決めたと思います。」

「長年この設定で運用しています。」

例えば、以前は発注から納品まで14日必要だった原材料が、仕入先の物流改善によって7日で納品できるようになったとします。

しかし、ERPの設定値が14日のままであれば、計画は以前の条件で計算され続けます。さらに、その14日が実績から算出されたものなのか、余裕を加えたものなのかも分からなければ、変更すること自体に不安が生まれます。こうして、誰も根拠を説明できず、誰も変更できない基準が残っていくのです。

念のための余裕が、余剰を生んでいないか

リードタイムには、納期遅延などの不確実性に備えて余裕を持たせることがあります。

例えば、購買部門では仕入先の納期遅延を考慮して3日、生産部門では設備トラブルを考慮して2日、物流部門では配送遅延を考慮して2日の余裕を設けているとします。

それぞれの部門には合理的な理由があるのかもしれませんが、これらの余裕が計画上で積み重なると、実際に必要な時間よりも全体のリードタイムが長くなります。

その結果、発注や生産の開始時期が早まり、在庫の滞留期間が長くなります。さらに、安全在庫も別途設定されていれば、同じ不確実性に対して複数の備えを持つことになります。

ここで確認したいのは、余裕を持たせた当時の理由が、現在も成立しているかということです。

過去に一度発生した納期遅延への対策が、その後何年も維持されているかもしれません。以前のブログ(2つのDX ー Digital Transformation とDetoX)でも取り上げましたが、こうした基準は時間の経過とともに形骸化することがあります。リードタイムも例外ではありません。

同じリードタイムでも、測っている時間が違う

納品リードタイムが10日で登録されています。この10日はどこからどこまでなのでしょう。

発注書を発行してから工場へ納品されるまでなのか?

購買担当者が購買依頼を受けてから納品までなのか?

納品後の受入検査が完了するまでをリードタイムと考えているかもしれません。

どの時点から、どの時点までを測るのか。この定義が揃っていなければ、同じ「10日」という数値でも意味が変わります。

さらに、土日を含む10日なのか、工場の稼働日で10日なのかによっても、ERPが計算する日付は異なります。

熟成や解凍のように、工場が休業していても時間が経過する工程もあります。

こうした違いを考慮すると、リードタイムの数値を正しく評価するためには、まず何を測っているのかを明確にする必要があることが分かります。

リードタイムは、いつも同じなのか

海外から原材料を調達する場合を考えてみましょう。

通常は発注から30日程度で納品されるものの、船便のスケジュールや港湾の混雑、通関などによって、25日で届くこともあれば45日かかることもあります。

ERPには30日と設定されています。

では、最も長い45日を設定すれば安心なのでしょうか。

通常30日で届く原材料を45日前から発注すれば、早期入荷による在庫増加につながる可能性があります。一方、30日のままでは、納期が延びた際に生産へ影響するかもしれません。

また、リードタイムは製造数量や設備の負荷、物流量などによっても変化します。通常は10日で製造できる製品でも、大量注文や受注の集中によって20日かかることもあります。

こうした変動を、ERPの計画ではどのように扱えばよいのでしょうか。

ERPが計画しているのに、最後は人が決めている

MRP(資材所要量計画)は、必要数量や必要日、リードタイムなどの条件から発注提案を作成します。

ところが、購買担当者はその結果を確認し、発注日や納期を変更してから仕入先へ発注します。

「この仕入先は、最近納期が遅れています。」

「この原材料は、いつも少し早めに発注しています。」

「ERPの提案通りに発注すると間に合いません。」

こうした判断が繰り返されているとしたら、何が起きているのでしょうか。

担当者がERPに登録されていない最新情報を持っている可能性があります。また、リードタイムの設定値や計画条件が実態と合っていない可能性もあります。

人が修正することで、実際に納期遵守率が改善しているのか。それとも、長年の経験や慣習によって修正しているのか。

ここを確かめることで、ERPの計画結果をどこまで利用できるのかが見えてきます。

まとめ

ここまで紹介した問題には、共通する特徴があります。リードタイムの数値はERPに登録されていますが、その根拠、測定方法、実績との違い、計画への影響が十分に把握されていないことです。

ERPは設定された条件に従って計画を計算します。リードタイムが実態と合っていなければ、その計算結果にも影響が及びます。

一方で、リードタイムには変動があり、実績と完全に一致する固定値を設定できるとは限りません。さらに、その時間は仕入先や物流会社など、サプライチェーンを構成する企業ともつながっています。

ゆえに、何を測り、どの数値を設定し、変動をどのように扱うのかを考える必要があります。

みなさまの会社では、ERPに設定されているリードタイムの根拠を説明できるでしょうか。そして、その数値を使って作られた計画結果を、どこまで信用しているでしょうか。

次回は、ERPで利用されるさまざまなリードタイムの種類と役割を整理します。購買、生産、物流などの業務を通じて、それぞれの時間がどのように計画へつながっているのかを考えていきます。