例外業務をよく考えてみる

「うちは例外業務が多いからパッケージは向かない」という言葉をたまに聞くことがあります。だからといって「では、標準機能にない業務はアドオンしましょう」とはもちろんならないのですが、そもそも例外業務はどこからが例外でどこまでが標準業務なのでしょう。

この問いは、ERP導入の場面だけに限りません。日々の業務改善や組織運営を考えるときにも、とても重要な視点です。例外業務が多い企業では、現場が大変になるだけでなく、改善そのものが進まなくなります。目の前の対応に追われるうちに、業務の全体像を見直す時間が失われていくからです。

今回の投稿では、この例外業務に焦点を当てます。例外と標準の境目はどこにあるのか。例外業務はなぜ減らないのか。さらに、例外業務をどうやって標準業務へ近づけていくのか。これらのことを考察します。

標準業務と例外業務の境界線

例外業務は、どの現場でも数多く存在します。いつもと違う対応、手間がかかる対応、個別判断が必要な対応。こうしたものをまとめて「例外」と呼んでいます。

ただ、少し考えてみると、毎週のように発生していることまで例外と呼んでよいのか、という疑問が出てきます。頻繁に起きていて、担当者もある程度やり方を知っていて、毎回似たような調整をしている。そうした業務は、すでに通常運用の一部です。「うちは例外が例外ではないんです」と言われる企業は、まさにこの状態にあたります。

本来、例外業務とは、発生頻度が低く、あらかじめルール化しにくく、その都度の判断や承認を要するものです。事故対応や制度変更に伴う一時対応のように、通常の流れから外れるものには、たしかに例外という言葉がしっくりきます。

その例外業務は本当に例外なのか?

例外業務が多い企業では、よく話を聞いていくと、標準業務の定義が曖昧だったり、そもそも定義されていないこともあります。決めるべきことが決まっていない。決まっていても守られていない。守られていなくても、その場で誰かが調整する。こうしたことが繰り返されることで、業務がいつまでも「例外業務」のまま残ってしまうのです。

例外業務がなくならない本当の理由

例外対応には手間がかかります。確認し、調整し、承認を取り、関係者に連絡し、場合によっては入力をやり直す。こうした作業は、一件ごとに見れば小さな負担に見えるかもしれません。ところが、日々それが積み重なると、現場の時間はどんどん削られていきます。

そうなると、なぜこの例外が起きているのかを考える時間がなくなります。原因を整理して、前工程へ戻し、ルールやマスタを見直し、運用そのものを変えていく。そうした改善活動には、考える時間と、関係者で議論する時間が必要です。例外業務が多い現場ほど、その時間が取れません。目の前の処理を回すことが優先されるからです。

つまり、例外業務は手間がかかるだけでなく、改善に取り組む余力まで奪っていきます。ここに、この問題の根深さがあります。忙しいから改善できない。改善できないから例外が減らない。例外が減らないから、また忙しくなる。この循環に入ると、例外業務はなかなかなくなりません。

例外業務を標準業務にする例

ここで、少し具体的な話を考えてみます。

事務所では、生産計画を頻繁に変更しなければなりません。需要が目まぐるしく変わるからです。現場では、生産計画がたびたび変わることで無理や無駄が発生し、それが原価を押し上げています。経営としては、原材料高騰の中でも現場の創意工夫で生産性を高め、原価低減を進めたいと考えています。営業としては、お客様のニーズに柔軟に応えたいと考えています。

それぞれのマネジメントは、一見すると適切に対応しているように見えます。しかし、全体を俯瞰すると矛盾がいくつも見えてきます。短納期に応えたい。生産性も高めたい。原価も抑えたい。こうした方針が十分に整理されないまま積み上がっていては、業務が例外だらけになるのも不思議ではありません。

本質的な改善に必要なのは、お客様が自社の何を価値として見ているのかを見定め、自社の実力、つまり制約条件を踏まえた上で、それに基づく業務ルールと例外対応の基準を明確にすることです。そして、どの部門も決めたルールを守ることです。一定期間、その運用を徹底し、そこで浮き彫りになった問題を議論する。改善は、そうした積み重ねの中で進んでいきます。

先の例であれば、顧客の強い要望として納品期限が一週間であるとします。これを守るためには、製品の安全在庫をどこまで持つのか、生産凍結期間を何日とするのか、一方で生産のフレキシブル性をどこまで確保するのかを決める必要があります。言い換えると、生産割り当てを100%まで詰めてしまうと、計画変更のたびに段取り替えが必要になります。そこで、思い切って80%稼働を前提にし、緊急対応の余地を持たせるという考え方が出てきます。あわせて、何をもって緊急とするのか、といった条件も整備します。

もちろん、そのぶん製造コストは上がります。であれば、その条件を踏まえて標準原価を算出し、販売価格と利益率を見直し、PL予算まで整合させる必要があります。要するに、「生産計画の変更が多くて困っている」という事象に対処するには、現場の工夫とは別の切り口として、企業全体の予算策定から業務マネジメントまで、串刺しで見直す必要があるのです。

こうして、企業全体で決めたルールに基づいて標準業務を設計し、そのルールから分岐する緊急対応を例外として扱うのです。

例外業務を整理するための視点

例外業務を減らすには、まず例外をひとまとめにせず、その性質ごとに分けて考えることが大切です。発生を前提に処理を整えるべきものもあれば、突発事象として備えるべきものもあり、そもそもの発生頻度を下げていくべきものもあるからです。

まず一つ目は、発生自体は避けにくいものの、業務ルールを見直すことで作業負担を軽くできる例外です。返品やキャンセル、特別採用、納期変更のように、一定の頻度で発生し、今後もゼロにはならないものがこれにあたります。こうした例外は、都度の個別判断に委ねるのではなく、条件や承認ルート、処理手順を定め、システム上の分岐として扱うことで、現場の負担を減らしていきます。

二つ目は、想定外の例外です。天災やシステム障害、突発的な事故のように、通常運用の枠組みでは吸収しきれないものがこれにあたります。これらは標準業務の中に細かく織り込むというより、代替運用、事後記録、責任分担などの対応方針をあらかじめ定めておくことが重要です。

三つ目は、業務ルールや基準を見直すことで、発生頻度そのものを下げていくべき例外です。先に挙げた生産計画変更の例のように、目の前の対応をうまく回すことだけを考えるのではなく、なぜその例外が繰り返し発生しているのかを見直していく対象です。安全在庫、生産凍結期間、緊急対応の条件などを整理することで、例外の発生を抑え、標準業務へ近づけていきます。

まとめ

例外業務という言葉で思考を止めてしまうと、業務はいつまでも複雑なままです。必要なのは、その性質を見極め、標準業務との境界を引き直していくことです。

そうして初めて、処理すべき例外と、備えるべき例外と、減らしていくべき例外が見えてきます。そして、その線引きは現場任せにするのではなく、企業全体でルールや基準として整えていくことが重要です。例外業務をよく考えることは、業務をシンプルに回すための入口なのです。